病気と治療
治療方針
皮膚に関するお悩みはどんなに些細な事でも診療、治療いたします。
アトピー性皮膚炎、じんましん、水虫、皮膚癌、膠原病、にきび、脱毛症など皮膚科の対象疾患は多岐にわたります。
「こんなものは皮膚科でいいの?」「これは皮膚病ですか?」と考えられる方もいらっしゃるでしょう。
皮膚科では0歳から100歳まで男女を問わず皮膚(体の表面)にできた病気や現象についてすべてが診察の対象になります。
時には皮膚の病変から内蔵の病気が発見されることもあります。爪や毛髪、陰部の皮膚症状なども皮膚科で診察します。皮膚にできた腫瘍の手術もします(外科でなくても大丈夫です。)。
目に見える所にできたものについては何でも当院にご相談下さい。
主な疾患について
アトピー性皮膚炎
①アトピー性皮膚炎とは
特徴的な分布で慢性的に繰り返すかゆみのある発疹が生じる病気です。患者さんの多くは アトピー素因(花粉症・喘息・アトピー性皮膚炎に本人または家族がかかったことがあること。およびIgE抗体を作りやすい素因を持っていること。)を持っています。また、慢性に経過する疾患で長期にわたって症状を繰り返します。
皮膚症状は全身の多彩な湿疹病変です。全体に皮膚は乾燥しています。皮膚炎は額、眼のまわり、口のまわり、くび、四肢の関節周囲、背中やお腹などに出やすく、ほぼ左右対称性に出ます。年齢とともに症状は変化していきます。乳児期は頭、顔にはじまりしばしば全身に拡大していきます。思春期、成人期になると関節周囲や顔面を中心とした上半身に症状が強くなります。
②当院でのアトピー性皮膚炎治療方針
日本皮膚科学会および厚労省の発表した診断治療ガイドラインに沿って、ステロイド外用剤を中心とした治療を行っています。ステロイド外用剤は皮膚科専門医の指導の下で適切に使用すれば安全に使用できる薬剤です。副作用が生じないように年齢、部位、症状にあわせて適切な外用剤を使います。必要に応じて抗ヒスタミン剤内服や保湿外用剤なども併用します。ダニ、ホコリ、食物などのアレルギー、汗、乾燥、心理的ストレスなどの増悪因子があれば対応策を考慮します。必要に応じて検査も行います。慢性の病気ですから、あせらずじっくりと治療していくことが大事です。じっくりと話を聞きながら何が悪いのか患者様とともに考え、指導していきます。
蕁麻疹(じんましん)
①蕁麻疹(じんましん)とは
かゆみを伴う膨疹(ぼうしん、軽度ふくらんだ赤い発疹)が出現します。皮疹は一過性で数分から数時間で傷跡を残さずに消失し、出没を繰り返します。発症から6週間以内のものを急性蕁麻疹、6週間以上のものを慢性蕁麻疹と呼びます。蕁麻疹の原因はアレルギー性(食品、薬、蜂毒など)、非アレルギー性(気温の変化、物理 的刺激、汗など)多岐にわたります。しかし、原因がわかる蕁麻疹は全体の2,3割程度と言われています。ごくまれに甲状腺疾患や膠原病、感染症などが原因となる場合がありますが、血液検査などを行ってもほとんどの場合異常は認められません。
②蕁麻疹の治療
一般的には抗ヒスタミン剤の内服を行います。あまり強い副作用はありませんが、眠くなることがあり注意が必要です。重症の場合には副腎皮質ホルモン(ステロイド)の投与が行われる場合があります。なかなかコントロールできない場合にはいろいろな抗ヒスタミン剤を試します。そのほか、H2ブロッカー(胃薬の一種)や漢方薬などを併用することもあります。内服薬は効果があっても急にやめると再発することがありますので、症状をよく見ながら医師の指導を受けながら徐々に減量していきましょう。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
①尋常性乾癬とは
銀白色のふけのようなもの(鱗屑)が付着する赤いくっきりとしたやや盛り上がった発疹(紅斑)が生じます。全身とくに頭・肘・膝・腰などにできます。原因は不明ですが、遺伝的素因やストレス、食生活などが関係していると言われています。難治性の慢性疾患です。乾癬は伝染する病気だと誤解されることがありますが、伝染することはありません。
②乾癬の治療方針
難治性の病気ですが、様々な治療法があり、症状をある程度コントロールすることができます。まずは外用療法(ステロイド、ビタミンD3、これらの合剤)からはじめます。外用療法でコントロールできない場合には内服療法(アプレミラスト、エトレチナート、シクロスポリンなど)、紫外線療法(PUVA、ナローバンドUVB、エキシマライト)などを症状に応じて組み合わせておこないます。また、最重症の場合には生物学的製剤を使う場合があります。現在は限られた施設(大学病院など)のみで使用できますので、その際には紹介いたします。
尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)
①尋常性白斑とは
原因不明の皮膚が白くなる病気で「しろなまず」ともいわれます。皮膚の色素産生細胞の異常により色素(メラニン)が減少、消失し、白くなります。
②尋常性白斑の治療方針
紫外線療法(PUVA、ナローバンドUVB、エキシマライト)、外用療法(ステロイドなど)、表皮移植術などがあります。現在の治療法の中では紫外線療法が最も有効であるといわれています。頻繁な通院が必要で改善してくるまでにはかなりの時間を要しますが、あせらずに治療に取り組みましょう。なお、表皮移植術については当院では対応いたしておりません。
紫外線療法について
当院では最新式の紫外線照射器(ナローバンドUVB、エキシマライト)を導入しています。UVA、ナローバンドUVB、エキシマライトの照射が可能です。ナローバンドUVBは近年各種疾患に使われ、従来のPUVA療法やUVB照射と比べて安全かつ簡便に施行できて有効性も確認されています。乾癬(かんせん)、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、白斑(はくはん)、脱毛症などの治療に有効です。また、ナローバンドUVBと波長の異なるUVB照射器であるエキシマライトは難治性の脱毛症や白斑に有効です。
水虫(白癬症)
①水虫とは
水虫の原因は「白癬菌」というカビ(真菌)です。白癬症は全身に生じますが、特に足に発症したものを「水虫(足白癬)」と呼んでいます。足白癬には①趾間型(指の間がふやけてじくじくする)②小水疱型(主に土踏まずなどに小さい水ぶくれができる)③角化型(足の裏、特にかかとが硬く厚くなる)があります。また、爪にも感染し白く濁ったり厚くなったりします。(爪水虫(爪白癬))
②水虫の治療
水虫は治らないと諦めていませんか?水虫はちゃんと治療すれば治る病気です。「中途半端な治療になっている」「家族から再感染する」「診断が違う」などの理由で治りにくくなっています。確実な診断と適切な指導で治療していきます。また、爪の水虫や足の裏の硬い水虫は従来の塗り薬だけでは十分な効果が期待できません。そのため主に内服薬で治療します。1日1回連日内服する方法や短期間にまとめて内服するパルス療法などがあります。その方の症状や基礎疾患の有無などを考慮して投与します。内服治療の場合はまれに肝機能障害や胃部不快感などの副作用が生じることがあるため定期的な通院が必要です。近年爪白癬専用の外用剤が使用できるようになりました。内服薬と比較するとやや効果は弱いですが様々な理由で内服薬が使用できない方(使用したくない方)でも治療できるようになりました。
イボ(ウイルス性疣贅)
①ウイルス性疣贅とは
ヒト乳頭腫ウイルスが皮膚に感染してごつごつとしたイボが生じます。多発する場合もあります。手足に生じることが多い病気です。時に痛みを感じることもあります。ウオノメやタコと思い、市販の治療薬を使っている方もしばしば見かけます。診断によって治療法は大きく違いますので専門医の診察を受けることをお勧めします。
②イボ(ウイルス性疣贅)の治療方針
液体窒素による冷凍療法が広く一般的に行われています。かなり強い痛みを伴うことが欠点です。苦痛で通院を断念する方もいます。そこで当院では痛みを伴わない治療も取り入れております(ビタミンD3軟膏外用、モノクロール酢酸塗布、漢方薬など)。診察時に相談しながら治療方針を決めます。処置を続ける際には1~2週間に1度の通院が必要です。数ヶ月以上の通院になることが多いようです。
みずいぼ(伝染性軟属腫)
①みずいぼ(伝染性軟属腫)とは
伝染性軟属腫ウイルスが感染して生じる病気です。まんじゅうの様な形をした光沢のある米粒大のできものが全身に多数できます。できものの中心に白い芯がありそこにウイルスがたくさんいます。主に小学校低学年までの小児に発症することが多く、高学年以上になると患者さんの数は急激に減ります(まれに大人にも見られます)。乾燥肌や皮膚炎がある方はウイルスが入り込みやすく症状が生じやすくなります。
②みずいぼ(伝染性軟属腫)の治療方針
1,2年で自然治癒する可能性が高く、小児科の先生を中心に放置するように指導される場合も多いです。しかし、保育園やスイミングスクール等ではみずいぼのためにプールに入れない場合があります。 治療はピンセットを用いて一つ一つ取り除くのが一番確実な方法です。漢方薬の内服や貼付剤、外用剤などが使われる場合もありますが有効性は低いです。以前はそのまま取り除いていましたが、最近は処置の前に麻酔薬のテープ(ペンレス®)を使用します。1時間ほど患部に貼付すると痛みを感じずに取り除くことができます。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
①帯状疱疹とは
ヘルペスウイルスの一種(水痘帯状疱疹ウイルス)による感染症です。子供に多く見られる「みずぼうそう(水痘)」と同じウイルスです。小さな水疱が帯状に多数生じそこに強い痛みを伴う病気です。全身のどこにでも生じます。必ず左右どちらかだけに生じます。子供のころの水痘が治った後にウイルスは神経の中に潜り込んで残ります(潜伏感染)。何年もウイルスは眠っていますが、病気・疲労・老化などにより抵抗力が落ちた時に再び活動をはじめ(再活性化)、体の一本の神経を通じて出てきます。神経に沿って水疱が多数生じ、神経の傷害により強い痛みを感じます。重症の場合には発熱や全身倦怠感などの全身症状を伴う場合もあります。通常は2,3週間で治癒しますが神経痛が後遺症として長く残ることがあります(帯状疱疹後神経痛)。普通は一生に一度だけですが、時々再発する人もいます。
②帯状疱疹の治療方針
治療は早い時期(できれば発症3日以内)に抗ウイルス剤を使用することが大切です。痛み止めの内服薬やビタミン剤なども併用します。体力が落ちた時に発症することが多い病気ですので、無理をせず安静にしてください。冷えると痛みが強くなりますので患部の保温が大切です。不幸にして痛みが残ると治療に難渋する場合があります。投薬などで改善しない場合にはペインクリニック(麻酔科)への紹介を考慮いたします。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
①ニキビ(尋常性ざ瘡)とは
ニキビとは皮脂の分泌が過剰であることと毛穴が詰まることにより皮脂が毛穴のなかにたまって生じます(面皰…白ニキビ、黒ニキビ)。そして、つまった毛穴の中で、にきび菌などが繁殖して炎症を起こし赤いブツブツが生じます(紅色丘疹、膿疱…赤ニキビ)。それが治癒すると色素沈着や瘢痕が残ります(ニキビ跡)。 皮脂の過剰分泌、毛穴の異常は思春期には誰にでも起こります。しかし、ホルモンの影響(特に男性ホルモン)やストレス、紫外線、いろいろな皮膚への刺激(化粧、乾燥、髪の毛などの接触、擦れ、皮脂分解産物など)が増悪因子となります。
②治療方針
ニキビの治療では投薬だけでなく増悪因子を回避したり、生活習慣を改善したりすることが重要です。特に洗顔は大事です。治療については近年多数の外用剤や内服薬が使用できるようになり、ニキビの状態や肌の性質を考慮して選びます。毛穴のつまりを取って皮脂が毛穴にたまりにくくする外用剤(アダパレンや過酸化ベンゾイル)が使われます。また、赤いブツブツはニキビ菌が増えていますので抗生物質の内服薬や抗生物質の入った外用剤が使われます。ピーリングなどの保険外診療は当院では行っていません。
ホクロ(色素性母斑)・皮膚良性腫瘍・皮膚癌
①ホクロ(色素性母斑)・皮膚良性腫瘍・皮膚癌とは
皮膚には良性悪性含めていろいろな腫瘍があります。いろいろな形、色があり。専門医でも皮膚癌を見過ごしてしまうこともしばしばあります。診断によって治療方針や予後が大きく異なります。ホクロの除去についてはレーザー治療では保険外診療となりますが、切除手術は健康保険の適応となります。当院ではレーザー治療は行っていませんが、小さな良性腫瘍やホクロの切除手術は行っています。ほとんどは30分以内に終了する簡単な手術で済み、入院は不要です。大きいものや進行癌などは適切な医療機関にご紹介いたします。
②ダーモスコピー
拡大鏡にゼリーをつけて、病変部(皮膚腫瘍など)を詳細に観察する検査です。主に悪性黒色腫をはじめとする皮膚癌の診断に用います。患部を傷つけない検査ですから痛みを感じずに詳しく観察することができます。観察した画像はデジタルカメラで撮影保存することができます。その場で患者様ご本人にもその画像を見ていただくこともできます。(保険適応)
粉瘤
①粉瘤とは
皮膚の良性腫瘍の一種です。顔面、頚部、背部などに皮膚の中に皮膚の袋があり、その中に角質や皮脂が詰まっています。癌ではありません。時に炎症を起こして赤く大きくはれる場合があります。
②治療方針
治療は手術です。腫瘍を大きく切除して縫合する方法もありますが、この方法では大きな傷後が残ります。当院では主に「くりぬき法」という手術を行っています。腫瘍の中心に直径数ミリの穴をあけ、その穴から内容物と袋を絞り出します。この方法では手術時間が短時間で、傷跡も小さくなります。
ウオノメ(鶏眼)やタコ(胼胝)
①ウオノメ(鶏眼)やタコ(胼胝)とは
足の裏や指、関節のある所など強い力のかかるところに生じます。皮膚の最外層の角質層が肥厚して硬くなったものです。足の変形、靴の不適合などが原因となります。足の裏にできると強い痛みで歩行困難になることもあります。糖尿病や血行障害などがある場合にはそこから深い傷を形成することもあり、それが原因で足を切断しなければならないことさえあります。
②治療方針
硬い部分をはさみやメスなどを用いて削り取ります。削る際には痛みを感じないように細心の注意を払って処置をいたします。しかし、足にあっていない靴や歩行障害などがあるとすぐに再発します。当院では処置を行うとともに義肢装具士と提携してオーダーメイドの靴や中敷きの製作をご提案しています。
巻き爪、陥入爪
①巻き爪、陥入爪とは
爪が大きく湾曲して巻き込んだ状態が「巻き爪」です。爪の端が周囲の皮膚に食い込んでいるのが「陥入爪」です。爪が刺さったところから感染や炎症を起こし大きくはれることもあります。主に両足の第1趾に認めます。「巻き爪」「陥入爪」が同時に生じている場合もあります。足の形、歩き方、窮屈な靴などが原因となります。また、ほとんどの方が深爪をしていて、悪化の原因となります。
②治療方針
軽症の場合には爪を十分に伸ばすようにするだけで、痛みなどの苦痛が軽減します。しかし、深く陥入した場合や周囲の炎症が強い場合などは爪を伸ばすことが困難です。様々な工夫(爪甲周囲のテーピング、綿花挿入、刺さった爪甲の除去、投薬(抗菌剤など)など)で爪甲を伸ばしますが、困難な場合は手術(ガター法、フェノール法など)を行う場合もあります。また、弯曲した巻き爪を矯正する形状記憶合金のワイヤーも使用しています(マチワイヤー(保険適応外))。
円形脱毛症
①円形脱毛症とは
しばしばストレスが原因といわれますが、詳しい原因はいまだに不明です。自己免疫の関与が考えられています。病変部が小さく単発の場合は比較的治癒率は高いですが、広範囲の場合や多発する場合に難治性となることがあります。短期間に全頭部の毛髪が脱落する場合もあります。
②治療方針
外用剤(ステロイド、塩酸カルプロニウムなど)、内服療法(ステロイドなど)、紫外線療法(NB-UVB,エキシマライト)、冷凍療法、局所免疫療法(SADBEなど)、局所注射(ステロイド)などさまざまな治療法があります。どの治療も長所短所がありますが、まずは外用療法から開始する場合が多いです。外用が無効の時にそのほかの様々な治療法を試します。SADBE(squaric acid dybutylesterの略 )による局所免疫療法は比較的有効率の高い治療法で、特殊な薬品を使い故意に患部をかぶれさせる方法です。また紫外線療法の中でもエキシマライトが有効な場合もあります。いずれにしても長期の治療になることが多いので反応を見ながらあせらずじっくり治療に取り組む必要があります。短期間に全頭部の毛髪が脱落する症例にはステロイドパルス療法(短期間に大量のステロイドを点滴投与する)が必要な場合があり、その際には総合病院皮膚科に紹介いたします。
男性型脱毛(AGA)
①男性型脱毛(AGA)とは
男性ホルモンの一部(DHT)により毛周期の成長期が短くなり、脱毛が進行する病気です。頭頂部または前額の生え際あるいはその両方が徐々に薄くなります。遺伝的要素あり、血縁者に同様の症状を認めることが多いです。
②治療方針
AGA以外にもいろいろな脱毛症がありますので必ず専門医の診断を受けてください。治療は様々ありますが、当院ではフィナステリド、デュタステリド(DHTを抑制する内服薬)を使用しています。自費診療(保険外診療)となります。別記の料金表をご参照ください。